ブランドもの

私のいつもしている腕時計は、18歳の終わりに、初めてもらったバイト代で買ったものだ。1万2000円くらいした。
それからはや12年。無くしもせず、壊れもせず、飽きもせず。年で割ったら、年間1000円だ。相当なご縁があるんだな、とずっと使い続けてきた。


今、私の家は、改装工事をしている。この間の休みは、汗をかきかき、部屋の荷物を全て運び出した。本棚も空っぽにした。そしたら、枠が歪んで本棚が壊れていることがわかった。本を詰め込みすぎていたのだ。
もう、全ては元に戻せない。全ての本を戻したら本棚が崩壊してしまう。本を処分しないといけない。
しかし捨てられない。読んでない本もある。だいたい、専門書は高い。一冊3000円くらいするし。
一体、この本を買うのに、いくらかけたんだろう…と数えたら、頭がクラクラした。


この間、先輩達と、焼肉を食べた。先輩の一人が、プラダの綺麗な腕時計をしていた。
その時計、前から気になってたんですよね、綺麗な文字盤ですね。
うん、たぶんシェルかなあ、ずっと気に入ったデザインを探していて、やっと見つけたの。思い切って買ってみた。
そんな会話をしていたら、私もそういうのが欲しくなってしまった。


ブランドものなんて、財布しか持ってなくて、今まで欲しいとも思ったこともなかったけど、初めていいなと思った。
美しくて、それなりに価値があって、持ってるとうきうきするもの。ずっと使って、私が使わなくなったら、次の人に譲ったりできるもの。
ブランドものって、そういうことができるんだなあ。いいな。


貯めに貯め込んだ本を見ていると考える。もしも、こんなに本を買うような人生じゃなくて、誕生日にはカバンや靴や宝石や…自分にご褒美あげちゃう…みたいな道を選んでたらどうなってたのかな。


今までも同じことを考えては、とはいってもね、って笑ってきたけれど、今日はちょっと違う。
初めての価値観が自分の中に入ってきて、ははあ、と感じいっているところなのだ。