呉服屋の接客態度についての一考

最近、呉服を売る店に数店行ったのですが、その時店員の接客の独特さに触れたので、ちょっとここに書いておきたいと思います。

浴衣だけでなく、着物を売っているところに行くと、たいていの場合は着物を着た女性店員が接客についてくれる。洋服を売っているところとは違って、店員の会話量が多い印象がある。すぐに客の目的を訪ねてくる。何がほしいのか、どんな柄が好みか、着付けのための小物は持っているか…。また、洋服を売っているところと違って自由に店内を見せてくれない。ぴったりと横についてくる。横で色々言うので話を合わせていると、すぐに着物を試着させようとする。
これは一体何なんだ。
その接客の印象を、感覚的に表現すると、「ねっとりしている」と言える。言いかえれば、なれなれしい。
なんでそんなことになるのだろうか。
まず一つ考えられることは、店員の年齢層である。ざっと見ると、若い人もいるが、50代から60代の女性が多い。私に接客してくれた人も5,60代の女性だった。その年代の女性と言うのは、まあ大体はおしゃべりが得意である。相手をするのは自分よりも若い女性であるから、自然となれなれしくなるのもあるかもしれない。しかし、そうなると、30代後半と思われる店員に接客してもらったときの同様の印象はどう説明すればいいか。
もう一つ考えられるのは、着物と言うものは単価が高い。だからそうそう売り上げがあるわけではない。また、最近は着物を着る人が激減している。だからせっかく来店した客なのだから、しっかりセールストークをして、買ってもらわないといけない、という心理が働くのかもしれない。
さらに、今回私があちこち回って感じたのは「上から目線」と感じる態度である。このようなことを考えたきっかけは、予算よりも高い下駄を買い、さらにすすめられて浴衣用のカゴを買った体験からである。品物自体は履き心地がいいし、カゴも浴衣の柄によく似合っているし、結果的に大変満足なのであるが、何だかもやもやするのだ。何なの、この「買わされた」感は…。
たいていの客は、洋服とは違って和服の知識が少ない。着付けのために何をそろえたらいいかとか、時季に合った着物はどれかとか、どの柄とどの柄を合わせたらいいのかとか、そういう情報や経験を持たずしてやってくる。着物を売る立場の人は、そういう客に対して「この人は知識がないから教えてあげよう、あげなければならない」という意識…無意識かもしれないが…が働いているのではないか。
そもそも、着物を買うということは敷居が高い。大体単価が高い。簡単には着れない。だけど、日本の行事の中には和装がマストなこともまだあるので、半強制的に呉服店に行かないといけないことがある。けれども、そんな数少ない来店の機会が、今回私が各所で経験したような、なんだかねっとりとして落ち着かない印象であるのは大変残念な気持ちである。
着物の精緻な織りとか、洋服にはない色合いとか、大胆な模様とか、美しさについてはみんなが認めるところである。普段から、呉服売り場が親しみのあるところであれば…それはつまり、ぶらりと寄って、「ああ、きれいだな、いつか着てみたいな」と鑑賞できるような場所であるなら、例えば、いざ30万円自由にできるチャンスがやってきたとき、「海外のブランド物を買っちゃおうか、それとも…」という選択肢の中に着物が入ってくるのではないだろうか。
着物離れが激しいので、着物の単価を下げて普及させようとか、業界としても色々努力しているとは思うが、意外とこういう特殊な接客文化が影響しているのかもしれない、と思ったのであった。


妹にこういうことを話したら、「そりゃ、姉ちゃんが店員の接客に負けたんだよ」とあっさり。まー確かにそうかもしれない…。
でも、気の弱い客がいるんだからさ…もっと選択の自由を与えてほしいんだよね…。
せっかく考察するくらい浴衣のこといろいろ揃えたんだから、今年の夏は3回くらい浴衣着れたらいいなあ…。