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最近読んで一番面白かった本

フロイト家の日常生活 (20世紀メモリアル)

フロイト家の日常生活 (20世紀メモリアル)

先日、しーなさんにこの本を貸してもらいました。
こんな本が出ているなんて知らなかった。

この本はフロイト家に20代後半から80歳ごろまでお手伝いさんとして入った女性の回想と、当時の関係者への詳細なインタビューから構成されているんだけど、20世紀初頭に生まれた女性の生きざまと第二次世界大戦以前の市民生活と謎めいたフロイト家の様子がわかる、簡潔ながらてんこ盛りの面白い内容なのである!

私は回想を語ったパウラという女性が、どのようにこの家に適応していったのかというところが興味深かったな。

オーストリアの寒村に生まれ、母は結核亡くなり、父はあちこちで女を作り、継母には祖父母の家に追いやられ、働けるようになったら奉公に出されたパウラ。
流れ着いたフロイト家でカリスマ先生のお世話をし、一生懸命そこの家に適応してポジションを得ようとするんだけど、奥様、奥様の妹、お嬢様、お手伝いさん2名、お嬢様の親密な女友達、カリスマを取り巻く飛び切り賢い女弟子たち…そこはカリスマ先生以外はみーんな女性なのです。
パウラはその集団の中で自分がどんな貢献ができるのかと、カリスマ先生に自分を認識してもらうにはどうしたらいいかということを感覚で気づいて、そのようにふるまい、そして認められる。
一家がロンドンに亡命してすぐにカリスマは亡くなり、お嬢様が当主として仕切るようになると、またパワーバランスが変わり、パウラの立ち位置も変更を余儀なくされる。

私も仕事的にずっと、カリスマ先生についてその指示のもとにチームが動く、しかも女性が多い、という環境にあるので、パウラに感情移入して読んでしまいました。
そうそう、カリスマ先生のもとには男性が残らないよね。フロイトユングと決別したりとかいろいろあったかと思いますけど、私がついてたカリスマ先生も男性はほとんど残らなかった。能力の高さが近い場合、ボス猿は山の上に一人しかいられない。
そしてカリスマは仕事的にワガママなので、それを受け入れて実行するのは献身的な人、主に女性が多く、結局女性ばっかりの集団になる。
これは私が経験してきたことなんですけど、パウラもそういう状況のころに入ったんだろーなーと勝手に想像してうなずきながら読んでいた。

読んでて思ったのは、経済的にも心理的にも、「ここに捨てられたら後がない!」という気持ちで生活するのはやっぱりだんだん歪んでくるんだな、ということです。
パウラを見ていたら、とにかく、自分の働きが人にありがたがられることに渇望していて、塩水を飲んでいる人みたいに何を成し遂げても、何をもらっても満足できなくて…というところが読んでて身につまされました。
ただ貪欲に、自分の尊敬する人からの承認を求めるだけじゃだめで、自分も与えないとすごく不健康な状態になってしまう。だけど自分が与える側に回るには、まずは何か自分が始めたり作っていったりする、ひとりだちすることが必要なんだろう。

なんか観念的な話になったけど、そう思いました。

私は主人公の女性の一生にフォーカスして読んだけど、先に述べたとおり、様々な視点からも楽しめる本なので、機会があったら皆さん読んでみることをお勧めします。


あと、またもやシュテファン・ツヴァイクが出てきた。
フロイトのお友達だったそうで、顔が広いと書いてあったがほんとに顔が広いんだな。
結局「昨日の世界」は読まずに返してしまった…