11 時30分過ぎ、ホテルの近くでトゥクトゥク(3輪自動車の後ろに人を乗せる席をつけた乗り物。みんなタクシー代わりに使っている。観光客と見るとすぐ横につけては「乗らないか?」と言ってくる。)を拾う。バンコク4日目なのでそろそろタクシーも飽きたから。100Bと言われたが、80Bに値切って国立博物館まで。前払い。地図を見せてもわからない風だったが、色々言ってわかってもらった。トゥクトゥクドライビングテクニックが半端じゃない。タクシーでは通らないところ(路地とか)をチョロチョロと通る。私は乗り口側に座ったのだが、乗り口にドアがあるわけではなく、口は開いたままなので、からだをめいいっぱい伸ばして、脚をふんばってそこから落ちないように気をつけた。あんなに小さな車なのに、エンジンを全開して、一番速い車線を通っていく。

抜け道を駆使して博物館に着いたはいいが、今日は何かの祝日らしく、博物館は休みだった。呆然と突っ立っていたら怪しいタイ人男に話しかけられた。「日本は今寒い」「札幌の雪祭りを私は知っている」「早稲田とタマサート大学(博物館のすぐそばにある大学。)は交換留学をしてるんだ」等。あげくの果てに、Iの顔を「君はタイ人みたいな顔だ」、と散々気を引き、「学生かい?」とか、「どこのホテルに泊まってるの?」と聞いてくる。あからさま怪しい。

「今日はここは休みだったが、この近くに『トール・ブッダ』と『ラッキー・ブッダ』がある。トゥクトゥクで行くとすぐだ。そしてそこに行った後、ここら辺にある(と、私が持っていた地図に印をつけて)『ダイアナ』という店に行くといい。タイシルクがいいぞ。ところで今日はトゥクトゥクで来ていたようだが、なんB払ったんだ?」と聞いてきた。「80B」と答えると、「おお!高すぎる!タイ語でPANG PAIは高い!と言う意味だよ」と教えてくれた。少し混乱する私たち。

男は近くに止まっていたトゥクトゥクの所に私達を連れていき、タイ語でなにか運転手と話し、「値段を聞いてみろ」という。運転手に聞くと、「50B」と言われ、怪しい男はさっき教えた言葉を使えと私たちに促した。「PANG・PAI〜」と声をそろえて言う私達。交渉成立。男はEを「キミはヒカル(宇多田)に似てるよ。Automaticは私も持っているよ」と言い残して私たちを見送った。

私たちは今日2回目のトゥクトゥクに乗ることになった。

この時点で、今からだまされようとしている事が私たちにはわかっていた。おそらく『ダイアナ』という店でぼったくられるのであろう。どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・

トール・ブッダこと、ワット・インに連れてこられてしまった。お金を払おうとしたら、まだいいというそぶりであった。運転手は入り口の門で待っているからと言った。

ワット・インは地元のお寺で、今日は祝日のせいかものすごい賑わいだった。屋台がたくさん出ていた。

しかし私たちはそれどころでなくあせっていた。相談の結果、『逃げよう』ということになり、何も見ずに入り口と反対側にある、地元の人しか使わないような出口をくぐってよく分からん路地に出た。

路地は大通りには無い、「これぞ地元」という雰囲気で、今考えて見ればいい感じだったが、その時は本当にドキドキしていて後ろを何回も見て逃げた。大きな通りに出た。とにかくもっと遠くへと、シー・アユタヤ通りを東へ、旧国会議事堂周辺の緑地公園へ逃げ込んだ。はっきりとしないのだが、おそらくアンポーン公園と思われるところに着く。

何の集まりだかわからないが大きなテントが何基も設営されていて、その下で(割と)盛装している人々が前に用意されたテレビを見ながらパイプ椅子に座っていた。花束と、キャラクター人形に博士帽をかぶせたものが売っている露店が数多く出ていた。一体なんなのか?

私たちも勝手にテントの中に入って、汗を拭きつつ次はどこに行こうかと考えていると、中国系らしき(30代?)若い男性が赤子を抱いて近づいてきたので、私が赤子に向かって笑いかけると、「何してるのか?」と聞いてきたのでついでだとばかりドゥシット動物園の場所を聞いてみたら、親切にも教えてくれた。

私たちは教えられたとおりに行った・・・行ったはずなのだが、迷った。

ウィマンメーク宮殿という、動物園とは反対側の方にでてしまったのだ。

公園のようになっているその敷地を歩くと、中に小さな屋台村があって、そこで謎のまんじゅうをぱくついた。(20B)

更に進むと、Royal Carriage Museumという、王室専用の馬車や象の背中に乗せる台やボートが展示してある所に着いた。中国人ツアー客の後ろについて行って見て周った。その先にはRoyal Photo and Portales Museum と言うのもあったが、入場料を払うのがもったいないので見るのは止めた。

つまりは迷ってしまったのだ。暑さにイライラしながらとりあえず大通りに出た。また先ほどのトゥクトゥクに出会ったらどうしようとおびえつつ、進んだ。するとやっと旧国会議事堂に出ることが出来た。動物園は近い。途中日本人観光客を捕まえて道を確認し、ずんずん進んだ。

動物園のゲートにやっと着く事が出来た。入園料は30B。すぐ右手にキリンやシマウマ、エミューがいた。私たちはすぐ隣のファーストフードの店に入り、休憩した。

「とりあえず象でしょう」と決まり、象を見に歩く。途中Iがトイレに寄った。動物園のトイレは一応タダらしい事がわかった。

暑い。周りは車だらけだ。檻の前に平気で止めている。料金表のところにも書いてあったのだが、ここは車を乗り入れても良い。土曜と言うせいもあって、家族連れが多い。花の付いた木が多い。ブーゲンビリアが美しい。雑然としていて暑臭いところだ。

やっと象にたどりつく。やはり象が一番人気?子供も大人も見ている。象は同じ所をぐるぐる、ぐるぐる回っていた。私は油断していたせいか、鳥にふんをひっつけられた。こんな事初めてだ。

次に鳥ゾーンへ。臭い。鳥ばっかり。しかし、日本より緑がずっとずっと多い気がした。3月だからだろうか?

日本の動物園にもあるが、やはりここにもあった。プレイランドが。子供達が遊んでいる。ゴーカートや、くるくる回る大ブランコなど。地元のドリームランドという、少しさびれかけた遊園地を思い出した。

Eは「トラが見たい」と主張していた。しかしそれはナシにしてもらった。それを探すほど体力は残っていなかったからだ。

旧国会議事堂に近い出口から出て、国会議事堂を見ながら、写真を撮りながら、タイの地元の人々に混じって歩いた。日本のように古い議事堂ではない。とても新しい。メンテナンスしているのだろう。

それと、その通りにて初めてタイで歩行者専用の信号を見た。タイの道路は横断歩道又は歩道橋しかなく、しかも滅多にそれらはないので、自力で渡るしかないのだ。よく交通事故が無いと思う。有るんだろうけど。

旧国会議事堂が正面に見える位置まで来たとき、辺りを見回すと地元の人々がなにかを座って待っていた。私たちも疲れていたので街路樹の下にしゃがみこんだ。しばらくすると回りの人々が今度は立ち始めた。いつの間にか車も通らなくなっていた。警官の数も増えてきた。警官の一人が私たちに「立て」という。言うとおりにしてしばらく待つこと数分。白バイ隊が来て、パトカーが来て、真っ赤な車にのった白い制服を着た人々が来て・・・その全員が乗り物から降りて、直立不動の体勢をとった時、議事堂の大きな門が開き、ラッパが「ぷあ〜」と鳴って、白い外車が滑り出てきた。どうやら国王陛下らしい。私たちも周りの人々も、道の向こう側の屋台村の人々も直立不動で黙っていた。白い外車はさっさと走ってしまい、国王親衛隊(?)の人々は訓練された速さで車・バイクに乗り込み、追いかけて行ってしまった。

いいモノを見た。

その後タクシーを拾ってホテルへ。英語があまり通じなくて、私たちも運転手さんも困った。「タイ人はタイ語しか話せないんだぞ」と、どうやら怒られたらしい。が、へーき。

ホテルに帰り、私は昨日買っておいたSinga(シンガ)ビールをくいっと一杯飲んだ。そしたら酔いが回って、眠ってしまった。

起きて、まだ少し酔ってふらふらしていたが、ホテルと同じ通りにあるという、地元タイスキの店に夕食を食べに行くことにした。

水と、野菜(パクチー・白菜・ビーフン等)と肉、シーフードがセットになったものを注文した。英語表記してあったので助かった。

正式な食べ方は、野菜は手でちぎり、食べやすくしてダシ汁の中に放り込むらしいが、そんなことは全く知らなかったので私たちは、「なんか、食べにくいねー」と、まるまる一枚の白菜を自ら噛み切っていた。汁には味が無いし、つけダレは辛さしかないし。「なんか、タイスキって?」とおもっていたら、あとからひき肉や鶏肉、又はシーフードなどのメインが運ばれてきた。それは皿の中でごちゃまぜにしておいてからダシのなかに入れる。なんとウエイトレスのお姉さんが給仕をやってくれた。周りを観察してみれば、気軽にみんな頼んでいる。

タイスキは結構うまい。いや、すごくうまい。ライスをひとつたのんでおじやにした。うまい。

しかし余ってしまった。しかし、できる限り腹に詰め込んだ。苦しかった。

帰り道、セブンイレブンによって、アイスを買って食べた。

道に貼ってあった、タイの今度封切りらしい映画のポスターを剥がして持って帰った。主人公の顔が切れてしまった。

どうやら、オカマのバレーボールチームの話らしい。少し面白そうだと思った。