恐怖との遭遇。
今日はバイト帰りにATとばったり会い、私は自転車を押しながら、彼女は歩きながら一緒に途中まで帰った。
しゃべりながら歩いていたら、後ろの方で、
「・・・・」
声が聞こえてきた。
えっ?と後ろを振り返ると、黄色い街灯の光の下に茶髪の男が壁にもたれかかってこちらを向いている。
「おんなにみて」
と、その男は言っている。明らかに尋常でない声。
ATと私は顔を見合わせた。『やばい』と言う雰囲気が漂う。
怖い事をATが言った。
「もしかしたらさあ、あの人、露出狂?」
私が『そうじゃないかな〜』とは思っていたが、あえて考えないようにした事をATは言葉にしたことになる。
恐怖が2人を包む。まだ後ろでは、
「おんなにみて(女に見て欲しい、といってるのか?)」
とその露出狂が言っている。
早足でその場を離れつつ、極力明るく大きな声でATと私はこんな会話をした。
「なんかさあ!うち!見ちゃったかも知んない!」
「あ〜!でもさあ!そういう時は!『ばっかじゃないの!』って顔をしなきゃいけないんだって!
『あんた小さいんだよ!』って言わなきゃいけないんだって!」
「あ!そーなの!」
いざ目の前にしたらそんなこと言う余裕はない、と思い知らされたが。
交差点のコンビニの明かりの近くに来て、後ろを振り返って見たが、露出狂が追っかけてくる様子は無かった。
「へっ、おっかけて来る勇気はないみたいだな!」
なんて、強がったりしてみたが。
そこで別れてそれぞれ家に帰った。
この恐怖を共有できたのがATでよかった、何となくそう思った。