春の課題映画その1 SHAME


SHAMEという映画を観てきました。
激しいセックスのシーンが多いのですが、その後ろに流れる虚無感とか本当に隠しておきたい秘密とかに思いを巡らせると、多くが語られない分、いろいろ考えさせられます。
画面の色合いが冷たくて乾いていて、とてもきれいでした。

私は「私を離さないで」から、キャリーマリガンが好きです。彼女の歌うNew York New Yorkは、彼女の表情と一緒に聞いてほしいです。

テーマ音楽も好きな感じです。

予告編をもう一度観て、予告編以上のことが語られていたかというと、そうではなく、予告編を観たら十分なような気がした。ストーリーを欲しがる、結論を欲しがる人にはきっとこの映画は退屈だろう。エロいことを期待して観た人は、映画のほとんどがセックスの、自慰のシーンであるものの、掻き立てられることはあまりなかったのではないか。
そう、この映画は何度も主人公の自慰のシーンが出てくる。なぜそこまで主人公は執拗に性欲を満たそうとするのかと考えると、真っ暗な水底を覗くようで恐ろしい。そしてなぜ恐ろしいのかと考えると、自分の抱えるさまざまな恥の部分に考えがいたる。
性欲が満たされた後の虚しさ。コントロールの効かない妹。過去。誰にも頼れない。冷静に切り取られる主人公の孤独が、画面、音楽、役者の表情、周囲の音を精緻に配して描写されている。観ていると心に差し込んできて、苦しくなって仕方なかった。
最後まで救済はない。主人公が泣き崩れるシーンは、救いようがなくて、この人をだれか助けてあげてほしいと願わずにはいられない、迫真の表情だった。
主人公は秘密がほころびて、それが少し露呈してしまった。でも取り返しのつかないことにはならない。主人公もその妹も変わらない。ほのめかされている過去の意味合いも変わらない。抜け出せない現在が冷静に提示されているだけだ。
確かに、過去のつらいことはそう簡単には明かされないし、人にいうものでもない。そうやって多くの人は生きているのだ。この映画は多くを語らないところがよかった。安直な結末にならないところがよかった。私は、そういうところに、この映画を撮った監督がもつ、他者を尊重する態度が表れてるんじゃないかと思った。だから、とてもリアリティがあるように感じたし、観ていて心のどこかが賦活された感じがした。